今回は、2016年〜2017年をピークにカルト的人気を誇っていた伝説のブランド『VETEMENTS(ヴェトモン)』について紹介する。
『VETEMENTS(ヴェトモン)』とは?
『VETEMENTS(ヴェトモン)』は2014年に設立されたフランスのファッションブランド。
モードとストリートをMIXさせた斬新なスタイルで一世を風靡した伝説のブランドで、"ラグジュアリーストリート"にモードの要素をブチ込んだ革命児だった。
ラインナップはメンズ・ウィメンズともに展開している。
『VETEMENTS(ヴェトモン)』の意味
ブランド名の『VETEMENTS(ヴェトモン)』はフランス語で”服”を意味する。
ブランドの創設者デムナ・ヴァザリアは「ファッションとは服であり、つまり、”ヴェトモン”なのだ」と語っている。
創設者の"デムナ・ヴァザリア"は現在バレンシアガで活躍中
『VETEMENTS(ヴェトモン)』の創設者・デムナ・ヴァザリアは2006年にアントワープ王立芸術学院を卒業後、2009年よりメゾン マルジェラ(Maison Margiela)、2013年よりルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)のデザイナーとして活動していた人物。
2014年に「当時のファッションに飽き飽きしていたから」という理由で『VETEMENTS(ヴェトモン)』を立ち上げ、2015年にはバレンシアガのアーティスティックディレクターに就任した。
近年のバレンシアガの代表作「スピードトレーナー」とヴェトモンの「ソックススニーカー」が瓜二つなのは”デザイナーが同じ”という背景があるからだ。
ヴェトモンはマルジェラのDNAを継ぐストリートブランド
『VETEMENTS(ヴェトモン)』の再構築デニムパンツはマルジェラを彷彿とさせるデザインだ。
というのも、上記の通り、『VETEMENTS(ヴェトモン)』の創設者・デムナ・ヴァザリアはメゾン マルジェラで修行を積んでいた過去がある。
モードの最先端で服作りを学んだデザイナーがハイブランド(ルイ・ヴィトン)での経験を活かして"モード&ラグジュアリー・ストリート"を作り上げるなんて夢のある話だ。
ヴェトモンは「バズりやすい服」作りが上手い
『VETEMENTS(ヴェトモン)』がめちゃくちゃバズっていた最大の理由は、ひと目でヴェトモンの服と分かるアイコニックなデザインにある。
極端に袖が長いロンTしかり、オーバーサイズのトレンドを作り出したのはヴェトモンと言ってしまって差し支えないだろう。
特にお洒落を披露する主戦場がSNSになった今、”細かい生地感や見えないこだわり”は評価されにくい傾向にある。
「ひと目でVETEMENTSと分かる=高い服を着ている=おしゃれに敏感=映え」
ヴェトモンは、人々が潜在的に何を求めているのかを捉え、時代の寵児となったのだ。
なぜ高い?!『VETEMENTS(ヴェトモン)』が高い理由
『VETEMENTS(ヴェトモン)』の服はデニムシャツで20万円を超えるなど、業界最高峰のハイブランドであるバレンシアガやメゾンマルジェラと比較しても高いことで知られている。
新興ブランドでここまで思い切った価格設定をしているブランドも珍しい。
『VETEMENTS(ヴェトモン)』が高い理由
『VETEMENTS(ヴェトモン)』が高い理由について、ヴェトモンのデザイナーがインタビューで答えていたコメントがある。
そのデザイナーは「自分たちはとても小さい会社であり、生産量について工場と調整すると、どうしてもこうなってしまう」と各アイテムが高額に設定されている理由を語っていた。
このコメントに対して俺はこう思う。「なわけねぇだろ」と。
むしろ高いから売れる!
『VETEMENTS(ヴェトモン)』が高い理由は、高いほうが売れるから。
これは計算され尽くした「ブランドマーケティング戦略」だ。
ヴェトモンはSNS時代に合わせて”ひと目でそれと分かるアイコニックな服作り”を武器にのし上がってきたブランドだ。
そんなマーケティングの天才集団「VETEMENTS」が、ただ生産コストが高いからという理由で商品の値段をアホみたいに高くするわけがない。
消費者心理を巧みに操るマーケティング戦略の勝利
これは分かりやすいハイブランド戦略だ。
「高い服を着ている俺、カッコいいだろう?お洒落でしょ?」とインスタグラムで自慢したいファッショニスタ達にとって、大切なのは憧れを持ってもらうこと。「カッコいいけど安い、コスパの良い服」はSNS映えしない。
もちろん、いい生地・素材を使っているのだろうけど、それ以上にアイテムの価格を高くすることによって生まれる”羨望の眼差しを獲得したい”という消費者心理をついてきているのだ。
『VETEMENTS(ヴェトモン)』は偽物が横行している
アイコニックでひと目で「VETEMENTS」と分かる服が人気のヴェトモンだが、その価格の高さ故に偽物が横行している。
「ヴェトモンのアイテムがほしいけど、高くて買えない」という人のためにそっくりだけど価格は1/100といったコピー商品があとを立たない。
ルイ・ヴィトンのコピー品と一緒だ。そのものの”質”よりも”見た目”に価値があると思われがちな高級品ほど偽物が出回りやすくなるが、当然、『VETEMENTS(ヴェトモン)』も大量の偽物が出回っている。
韓国の明洞では2,000円で『VETEMENTSの偽物』が売られている
実際に2016年当時、韓国旅行に行った際、露天で2,000円で「VETEMENTS」のロンTが売っていて衝撃をうけた記憶がある(笑)
もちろん偽物なのだが、おそらくそれを買う「SNSで「いいね」を獲得したい人々」にとって、着ているアイテムが本物か偽物かなんてことはどうでもいいんだと思う。
大切なのは”絵面”であって、質がどうとか、そういうことは二の次。
プリントTシャツの着心地に差は生まれない
さらに言ってしまえば、本物か偽物かによって大きく履き心地に影響が出るスニーカーならまだしも、布地にプリントを施しただけのプリントTシャツなんかだとぶっちゃけ着心地に大差はない。
今でもAmazonで「VETEMENTS」と検索すると、酷似したキャップが出てきたりする。ホンモノの「VETEMENTS」のキャップは4万円以上するから明らかに、、、だ。
『VETEMENTS(ヴェトモン)』の代表作&人気アイテム
既存のファッション業界に絶大なインパクトを与えた『VETEMENTS(ヴェトモン)』の代表作とも言うべき人気アイテムを3つ紹介する。
着心地、機能性を度外視したオーバーサイズトレンドはこれらのアイテムからはじまった。
コアなファンであれば、『カットオフデニム』や『タイタニックパーカー』など、他にも思いつくアイテムはあるだろうけど、一番抑えておくべきアイテムは下記の3つだと思う。
VETEMENTS(ヴェトモン) 16SS アームプリント オーバーサイズ カットソー
2016年前後の”VETEMENTSムーブメント”を生きた人間が真っ先に思い浮かべるであろうアイテムがこの『アームプリント オーバーサイズ カットソー』だ。
特にこのオレンジ色は「三代目 J SOUL BROTHERSの登坂広臣氏」が着用したことでインスタグラムを中心としたSNSで爆発的な人気を誇っていた。
VETEMENTS(ヴェトモン) アイコニック ロゴ レインコート
定番アイテムとして複数のコレクションで登場していたのがオーバーサイズのレインコートだ。
バックに「VETEMENTS」のロゴが入っているだけのシンプルなレインコートなんだけど、そもそもレインコートをお洒落アイテムとして使うという概念があまりなかったファッション業界に衝撃をもたらした。
VETEMENTS(ヴェトモン) 18SS ロゴリバーシブル MA-1ボンバージャケットブルゾン
ローラが着用していたことで話題を呼んだ超オーバーサイズのボンバージェケット(フライトジャケット)。
2016年〜2018年は量産型大学生の制服とまで言われていた「MA-1」が流行った時期だが、トレンドを上手く使いつつ、”圧倒的にオーバーサイズ”という話題性で一人勝ちしていた伝説のアイテムだ。
『VETEMENTS(ヴェトモン)』は終わった!?【オワコン説】
さて、随分と前置きが長くなったが、この記事の本題といこう。
結論、「(一時期の爆発的な)人気はもうないから、終わった。」と言ってしまってよいと思う。
「ヴェトモン、オワコン説」≒「イージーブースト、オワコン説」
「ヴェトモン、オワコン説」は2019年頃からネット上で囁かれてる。
この流れについて、俺はカニエ・ウェストの「イージーブースト」に近しいものを感じている。
「イージーブースト」は、カニエ・ウェストの「イージーを全ての人に」という願い通り、相当数が普及し、レア感が薄れたことでオワコン化がささやかれてる。
お洒落の最先端をいくインフルエンサーだけが履いているスニーカーから一般の大学生でも履いているスニーカーになったことで、プレミア感が薄れてしまったのだ。
『VETEMENTS(ヴェトモン)』についても、同じことが言える。
”知る人ぞ知る謎多きブランド”から、”一般層にも広く知れ渡るブランド”になったことで、最先端のお洒落を好む人々が「オワコン説」を唱えはじめたのだ。
これは一時代を築き上げたブランドには必ず訪れる宿命だ。
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「オワコン」と言われる時点で勝ち組
「愛の反対は無関心」とはよく言ったもので、そもそも注目浴びていなければオワコン化が唱えられることもない。つまり、「終わった、」と言われる時点で勝ち組なのだ。
とはいえ、一時期のような爆発的な人気が落ちついているのも事実。
今ヴェトモンを着ている人は本当にそのデザインが好きな人なんだと思う。
”流行り”は終わったけど、『VETEMENTS(ヴェトモン)』というブランド自体がダサくなったわけでも、終わったわけでもない。
これから『VETEMENTS(ヴェトモン)』のアイテムを買おうと思っている人は、安心して購入してほしい。
『VETEMENTS(ヴェトモン)』がダサいと言われるようになった理由
残念なことに、一部の界隈では『VETEMENTS(ヴェトモン)』は「ダサい」と言われてしまうことがある。
『VETEMENTS(ヴェトモン)』がダサいと言われるようになった理由は、お洒落感度が高い層のみならず、一般層にも広く普及したことにある。
中でも品の無い輩、”地元大好き卍卍ヤンキー”がイキリ散らかしてトヨタ・ハイエースを背景に写真をあげまくった影響がデカい。
ただ、それは仕方がないことだ。誰だって一着20万円以上する服を買ったら自慢したくなるだろう。自分の承認欲求を満たすのがSNSの本質であり、お気に入りの服をみんなに自慢するのは悪じゃない。むしろ当然のこと。
「ダサい」に基準は不明瞭
そもそも、「ダサい」という概念には明確な基準がない。誰から見た「ダサい」、なのか。なにを持って「ダサい」のか。その基準はあまりにも不透明だ。
自分の生きているコミュニティでダサいとされているなら着なければいいだけだし、それでも着たいなら自分がそのコミュニティを出ればいいだけの話。
「今更ヴェトモンを着るのはダサいかもしれない」とかいう訳が分からない考えに囚われるのはやめて、着たいと思ったら着る。着たくないなら着ない。で、着ている人を「ダサい」と揶揄するのをやめよう。
『VETEMENTS(ヴェトモン)』が炎上?!
Googleで「VETEMENTS」と検索すると、「炎上」というキーワードが目につく。
「何だこりゃ?」と思って調べてみたら、どうやらヴェトモンが公式インスタグラムの投稿画像でバレンシアガを批判したとのこと。
それが上記画像。
分かりやすく言うと、「ヴェトモンが2019年に発表したデザインをバレンシアガが2020年のコレクションでパクっているぞ!!」という主張がなされている。
ただの悪ふざけ
結論、両ブランドの悪ふざけだ。
この記事の冒頭でも解説したとおり、現在のバレンシアガを率いるのはヴェトモンの創設者であるデムナ・ヴァザリアだ。
現在、ヴェトモンの最高経営責任者は彼の弟のグラム・ヴァザリアだ。
今回の炎上騒動は、そもそも炎上でも何でもなくて「兄弟でちょっと悪ふざけをしてみた」、ただそれだけのことだと思う。
『VETEMENTS(ヴェトモン)』ブームを牽引した芸能人は「登坂広臣」と「G-DRAGON」
日本における『VETEMENTS(ヴェトモン)』ブームを牽引した芸能人は、間違いなく「登坂広臣」氏だろう。
当時の彼の影響力は凄まじく、イケてるファッションは登坂広臣のコーディネートで学べると言ってしまっても差し支えないレベルだった。
Supremeにおける窪塚洋介、A BATHING APEにおけるキムタクに並んで、登坂広臣がブランドの普及に与えた影響は大きいと思う。
登坂広臣は「G-DRAGON」のファッションを参考にしていた?
ちなみに、界隈では「登坂広臣はG-DRAGONのファッションを参考にしていた」という話が有名だったりする。
そして、たぶんそれは事実。登坂広臣氏のファッションはG-DRAGONに酷似している。
でも、それは悪いことではないと思う。俺たちが芸能人のファッションに憧れを抱くように、芸能人もまた誰かの真似をしているのだ。
憧れやリスペクトを持ってできるだけその人に近づこうと真似するのを「パクリ」とか「個性がない」とか批判してしまうともはや何も残らない。
基本的にクリエイティブは誰かの真似からはじまるのだ。いろんな人の”マネ”をミックスさせた結果、オリジナルが生まれる。
そんなわけで、『VETEMENTS(ヴェトモン)』ブームを牽引した芸能人は「登坂広臣」と「G-DRAGON」と言えるだろう。
有名YouTuber"コムドット"のやまと・ゆうたが『VETEMENTS(ヴェトモン)』を着用
ちなみに、『VETEMENTS(ヴェトモン)』を着ている有名人でググっていたら、人気YouTuber”コムドット”のメンバーである「やまと」さん、「ゆうた」さん、という方もヴェトモンを着用しているという話題が注目を集めていた。
ヴェトモンのMA-1を着用する「コムドット・ゆうた」さん
俺はいわゆる”楽しく騒ぐ系のユーチューバー”にはあまり関心がないからよく知らないのだが、より身近で若者の間で絶大な人気を誇っているインフルエンサー達も『VETEMENTS(ヴェトモン)』を着用しているらしい。
おそらく彼らのファッションを見るに「登坂広臣氏リスペクトなのかな?」と思う。
『VETEMENTS(ヴェトモン)』は今尚インフルエンサーに支持されているブランドなのである。
『VETEMENTS(ヴェトモン)』はラグジュアリーストリートの起爆剤だった
『VETEMENTS(ヴェトモン)』はラグジュアリーストリートの起爆剤だった。
さらに言ってしまえば、ここ5年のファッショントレンドの基盤は『VETEMENTS(ヴェトモン)』が作ったと言い切っても過言ではないはずだ。
お洒落とは、他者との差別化だ。
私達は「〇〇さん、お洒落だよね」と発言する時、無意識的に”(誰々と比べて)”という比較対象を脳内で作り出している。”他者とは違う布をまとっていること”がオシャレなのであり、誰も他者の裸を見て「〇〇さん、お洒落だよね」とは思わない。
この「お洒落の本質」を理解すると『VETEMENTS(ヴェトモン)』がダサい(お洒落じゃない)と言われるようになった理由が分かる。
ヴェトモンは大衆化しすぎたのだ。
「VETEMENTS」の本質は変わっていない
ヴェトモンは今なお斬新なファッションを提案し続けている。
また、リーボック(Reebok)や、運輸会社のDHLなど、他のブランドとのコラボレーションも精力的に行っている。
毎シーズンのコレクションにはテーマを定めないスタイルは創設当初から変わっていない。ヴェトモンが変わったのではない。消費者が変わっただけなのだ。
「オワコン化」がささやかれている『VETEMENTS(ヴェトモン)』だが、ヴェトモンが「ダサくなった」のではなく、市場環境がヴェトモンを「卒業」しただけだ。
俺にはそう思えて仕方がない。